「暴走する資本主義」 ロバート B.ライシュ 著 雨宮 寛 訳
東洋経済から出版された上記の本は、現在の状況を平易に的確に記載していると感じた。もう少し深く踏み込んだ原因分析があればより的確な方策に繋がるのではと思え、少し残念である。詳細は本を読んで頂きたい。
私はこれを一つのベースとして、新しい経済の体制を提案してゆきたい。今回はその最初である。今回は私の専門分野である工学からの政策の提案である。各方面からの政策の重要度については、本提案が纏まった段階で、再度、見直したい。
本書の、ポイントは幾つかある。
一つは、以下の青字で書かれた山田中央大教授の書評の一部であり、それがポイントであろう。しかし、私は山田先生が記載しなかった部分に今後の解があるものと思った。それは赤字で記載する。
現在は、「超資本主義(Supercapitalism) という新しい資本主義社会の段階に到達したことを強調している。超資本主義とは、近代自由社会の両輪であった民主主義と資本主義の結合(ライシュは民主主義的資本主義と呼ぶ)が崩れ、資本主義(市場原理主義とほぼ同義)が民主主義を飲み込んでしまう社会になっているという。
そして、格差拡大や生活の不安定さによってわれわれを苦しめるこの超資本主義が形成されたのは、企業が悪いのでも、政府が悪いのでもない。普通に生活しているわれわれ自身の内側にあることを強調する。誰でも安価でよいものを欲しがる。市場は安価でよいものを作って売ろうと、生産や流通を効率化し、労働賃金を下げ雇用を不安定にする。われわれが安くて品質のよいものを買えて喜ぶ裏側には低賃金で働く人々がいる。ショッピングセンターやネットで安くてよい商品を入手すればするほど、地元の個人商店が潰れることを考えよと、本書は説く。
現在の資本主義の姿は、グローバル化、科学技術の進歩によって資本主義の持つ消費者や投資家の利益が最大限に保証される社会になったということにほかならない。日本語タイトルの「暴走」というよりも、むしろ資本主義の完成型なのである。
これに対して、それ以前の経済は寡占体制により、利益が保たれ、しかも、経営者の心がやさしかったこと、が格差がなかったと該書には記載されている。私はこれが今後の経済を活性化するポイントであると思っている。
著者は、こうした状況が何故生じたかについて言及していない。私の工学としての研究者として経験から言えば、この時代の少し前に、大きな技術革新がありそれが特許となり巨大産業を起こし、それが寡占状態を構築したものであると思っている。
ここで、話は少し横道にそれて、人の努力への賞賛と、それによる社会の進歩について述べる。人は努力して何か新しいことの発見や発明をするとそれを獲得できる。これは多分人類の発生からそうであったのだろう。航海して新しい土地を見つければそれは発見者のものとなった。現在でも、鉱物などもそうであり、地下に金鉱脈を見つければ、発見者は権利を得る。
発明の場合、それは特許となる。私はこうした権利は人の素晴らしい行動への賞賛の一部でもあると思っている。
こうした権利は発見者や発明者に帰属し、それはまさに利権である。当然、他人がそれを侵害することは犯罪となる。つまり、強固な規制なのである。この強固な規制が実に、新たな成長の原点なのである。
こうした規制がないと人は安易に流れ、他人の成果を真似して結果として、人の努力する心を蝕むのである。
少し、ここで脱線するが、派遣のシステムは人の苦労を無にすることによる低賃金化であり、最も忌むべきことである。経営者の心も労働者の心も劣化してしまうことは前回に記したとおりである。
規制の撤廃が新たな成長を全てもたらすのではないのである。
また、ブランドや商標は過去から現在までの人の努力の蓄積の産物である。これも利権であり、他社は参入することはできない。人のまともな絶えまざる活動に対しての賞賛がブランドなのである。
ただ特許の凄さは時間が限定された利権であることである。永遠の利権ではないのである。永遠の利権を目指すとそこには紛争が生ずる。
それでは、なぜアメリカが弱くなってしまったのか、その原因は幾つかある。その一つは数日前のGMのTOPの反省にもあったが、彼らが間違いを犯したことである。その間違いの最大は努力をしなくなったことである。特許権に胡坐をかき、結局努力しなくなったのである。 また、技術的には抜本的なものが出にくくなっているのも確かではある。改良技術が主体になり、そうした技術をアメリカは尊重しなかったのも一つである。なお、デトロイトのGM本社周辺の惨状は恐ろしいものがある。無人のガラス窓が割れた高層ビルが林立している。
車については日本の物は恐ろしく改善した。少し前の車の窓は手で開けた。ミラーも車を降りて手で修正した。最新の車はトンネルに入ると自動的にライトも点灯する。それでも燃費は良くなり、バッテリーも上がることはない。 こうした絶え間ない改善は日本によりなされた結果、私のアメリカの友はすべて日本車に乗っている。レクサスあり、日本にないアメリカ仕様のトヨタ車、本田、レガシーも人気がある。
結局、アメリカの産業技術に対する予測が間違っていたのであろう。その結果、アメリカの大体の工業は衰退した。 アメリカが努力すれば工業でも勝てることを証明しているもの国防産業がある。彼らは軍需産業は今後とも伸びる、大切であるとしたから、現在でもそれは圧倒的に強い。 日本もソ連もフランスも彼らに対抗できる戦闘機は作れなかっし、現在も作れていない。
それとITとマニアル化の進展である。ITは熟練工の必要性を低減した。またマニアル化はIT化を容易にした。また、人の教育を容易にした。マクドナルドは世界共通である。これは日本でも幾つかの系列レストランで見られる。礼儀作法も何も知らない人でもマニアルにしたがい立派に礼をするし、立派にポテトフライを作る。
この二つが産業を世界にばらまいた。これにより安い商品が世界中から輸入できるようになった。
繰り返すと、民生用の工業の研究の停止と特許のないがしろ化、ITとマニアル化により工業技術を世界的に拡散させる基盤を作ったのである。
それと、特許にかかる費用が余りにも高いことである。国に払う金は比較的安いが、弁理士に払う金が高い。また、国に払う金も20年近くなると高くなる。結果として、特許を早く廃棄してしまう。これでは特に中小企業にとって特許を保有するのは無理である。国は色々言っているが誤魔化しである。少し些細なことであるが、個人で特許を取ろうとすると並大抵なことではない。少しの間違いの修正も大変である。驚くことに、弁理士を使うと、国は間違いの訂正を容易にしている。国と弁理士はつるんでいて、特許の取得に弁理士を通さなくてはならないようにしているのである。
随分と長くなった。格差が少なく、相互に信頼できる社会の構築を図る一つの手段を下記に示す。これは第一回目の提案であり、さらに追加して全体構想をつけたい。
1.人の努力の結晶である特許など知的財産権を強化する。具体的には、(1)期限を延長,(2).特許取得にかかる費用を低減化, (3)また弁理士を通さなくとも特許取得を容易にする,(3)知的財産の侵害の罰則を強化する。
2.革新、改良技術の基礎研究を強化する。これにより新たな産業の構築の基礎を作る。具体的には、(1)大学の基礎研究の強化、(2)企業の研究開発にかかる費用の無税化、研究開発にかかわる交際費も当然無税とする。
3.医学生理学の強化。具体的には.世界の著名医師を年収10億円で100人、5年任期で招聘する。
4.派遣業務は日本の努力意識のレベルを下げるので即刻、禁止する。
ただ問題はある。つまり、こうした政策により、現在の先進国はある程度格差も縮小するであろう。しかし、後発国の進展速度は遅くなるだろう。つまり、後進国との摩擦の拡大である。
昔であれば情報も少なく密入国、違法出国もなかったろう。しかし現在はITの一種であるnetにより情報は容易に取れる。
結果として、後発国が不安になるか、不法移民が増大するか、蛇頭が増大するか、テロが増大する可能性は増える。
こうしたことに対する策は次に検討したい。
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